看護婦を呼ぶのがもう少し遅かったら朱夏は死んでいたかもしれなかった。
それぐらい危ない状態だったらしい。
そして、不思議なことにそれ以来朱夏の病気は回復に向かっていた。
山場を越えたからだろうと裕太の父が言っていた。
だが、裕太はなんとなく違う気がしていた。
あの時、朱夏を殺そうとしていた女が助けてくれたような気がしてた。
何の根拠もないがそう思っていた。
そして、あれから数週間後に朱夏は退院することが出来た。「朱夏、よかったな!やっと退院できて!」
「うん。そうだね」
裕太の言葉に朱夏は笑顔で答えた。
「ね、裕太くん。覚えてる?」
「何を?」
そう言うと朱夏が少し不満そうに頬を膨らませた。
「朱夏っ?!どうしたんだよ?何でそんなふくれるんだよ?!!」
朱夏の反応に裕太が慌てる。
が、朱夏はそんな裕太の様子に吹き出した。
「嘘だよ!嘘!ごめんね?」
笑いながら謝るが、全然謝ってるように見えない。
「なんだよ!人のことからかって……」
「からかってないよ?ホントにちょっとがっかりしたんだから」
ちょっとぷぅってふくれたけれど、すぐにまた笑顔で言った。
「でも、忘れてても仕方ないかなって思ったの!だから」
そんな朱夏を見ていて裕太の方がふくれた。
「……なんだよ……何のこと聞いてるかわかんないのに覚えてるか忘れてるかなんて答えれるわけないじゃん」
「ごめーん。何のこと言ってたか教えるから怒らないで?」
笑いながら朱夏は言った。
「今日はね……私と裕太くんが会ってからちょうど一年目に当たる日なんだよ?」
入院してすぐに出来た友人。
毎日毎日会いに来てくれる大切な人。
「ちょうど一周年の日に退院なんてすごいでしょ?」
まだ、一年目。
まだまだこれから。
でも、あなたと出会えたこの日を祝っても良いでしょ?
この広い世界であなたに出会えたこの偶然を祝わないでいられない。
あなたに出会えたこの奇跡を。
「大好きだよ、裕太くん。これからもよろしくね?」
これからも、この奇跡に感謝しながら…
あなたといられたら良いな。
THE.END
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