昼過ぎまで降り続けていた雨が、まるで嘘のような青空。 けれど、雨が降っていたことは嘘でもなんでもない。その証拠にあたりは雨の日特有の少ししめった空気のにおいがした。 大きく伸びをして、しめった空気をいっぱいに吸い込んだ。
雨は、恵みの雨。
なくてはならないものだとわかっているけれど、やはり雨が降っていると憂鬱になってしまう。
遠くからミシンの規則正しい音が聞こえる。もう部活が始まっているのだろう。運動場や体育館、玄関からは少し離れているせいか、学生たちの声はあまり耳に届かない。
めいっぱい吸い込んだ空気をゆっくりと吐き出しながら、目を開け、改めて周囲を見渡す。
おそらく園芸部の活動場所だろう小さな菜園には、青々とした茄子が雨雫をきらめかせながら実っていた。
もう夏はすぐそこに来ている。
決して大きくはないけれど、その小さな菜園は全身で夏がすぐ近くまで来ていることをしらせていた。
彼らにとって雨は間違いなく恵みの雨。夏が近い今は喜びの季節。人間の憂鬱なんて少しもうつらないほどに、全身で喜びを表現しようとしている。
うらやましいと少しだけ思いはするけれど、植物になりたいとは思わなかった。
きらきら輝く植物よりも、もっとまぶしく輝けるように。
さっきよりも幾分か軽い足取りで水溜まりを飛び越えた。飛び越えきれずに、水がぴしゃりと跳ねたが、気にせずに校舎へと戻っていった。
夏はすぐそこに。
それから、雨よりも憂鬱な試験もすぐそこまで……
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