「っつーかさ、なんで俺に頼むんだよ?」
 鈴木の質問に、田中は首を傾げながら考えた。
「……私の姿、見えたから?」
 実にわかりやすい答えだった。だが、そんな答えで納得は出来なかった。
「他に見えるヤツいるんじゃないか?俺じゃなくてそいつに頼めば良いだろう」
 ただ、面倒だなと思ったから。
 思ったことをなんとなく言ってしまっただけだった。
「鈴木、あの、ひょっとして迷惑……?」
 その鈴木のふとした言葉に、田中は小さく問いかけた。
 心なしか声が震えていた。
 けれど、鈴木は気づいていなかった。
「そりゃな。こっちの都合お構いなしに、どこにあるかもわからない物を探させられるんだから」
 気づかずに、追い打ちをかけた。
「……じゃぁ、いいよ」
 田中は、小さく、投げやりにも聞こえる言い方で呟いた。
「……え」
 思っていたのとは違う反応で、聞き間違いではないかと思った。
 あまりにも小さな声で、いつもの田中と違うということにやっと気づいた。
「迷惑かけてごめん。今までありがとう」
 でも、遅かった。
 鈴木が最後に見た田中は小さく微笑んでいた。
「…………ばいばい……」
 涙だけを残して、田中は姿を消した。

おわり。

 

最初からやり直す?