2周年、ありがとうございます。
ここまでこれたのも皆様のおかげです。
その感謝の気持ちを込めて、2周年企画を企画させていただきました。
すこしでも、楽しんでいただければ幸いです。
この北国も、やっと桜が咲こうとしている。 「鈴木ー、ねぇ、鈴木ってばぁ」 学校帰りにいつも聞く声。鈴木は何も考えずに返事を返した。 「なんだよ、用もないのに呼ぶなって言ってるだろう」 振り向きざまにそう言うと、やはり予想したとおりの少女が立っていた。いや、立っていたというのは少し間違いだ。 「……田中、だよな?」 「そうよ」 鈴木は目の前の白いワンピースの少女―田中を凝視した。 彼女は間違いなく、いつもと同じ田中だった。着てる物がなんで制服じゃないんだとか、寒そうな格好だなぁってところを抜かせばいつもと変わらない様子だった。けれど、明らかにおかしかった。 「……………………何で、半分透けて浮かんでるんだ?」 鈴木の目の前に浮かんでいる田中は、なぜか向こうが見えるくらいに透けていた。これは、普通の人間ではあり得ないことだった。 「なんかねぇ、死んだみたい。幽霊ってやつ?」 当の本人、田中は緊張感の欠片もない声で笑っていた。 鈴木はその様子に思わずため息をついた。 大変なことになっているにも関わらず、田中はいつもと全く変わらない様子だったからだ。それは良いことなのかもしれないが、どうにも気が抜ける。 「田中、オマエさぁ……死んだみたいって普通あっさり、しかも笑って言うか? 大体、幽霊って未練があってこの世にとどまるもんじゃなかったか? 未練なんてあるのかよ?」 実際のところどうなのかはわからないが、本やら映画やらでは幽霊は未練がなくなって初めて成仏できるらしい。もしそうなら、この田中のどこに未練という物があるのだろうか?鈴木の目にうつる田中は何も考えないで生活していそうな少女だった。 「だってさぁー、死んだ実感がわかないんだもん。それに、未練ぐらい私にだってありますよぉだ!」 バカにされていることに気づいたのか田中は、軽く舌を出してあっかんべーと鈴木に言ってやった。 どこをどう見ても、未練のある死者には見えなかった。 そんな田中を見ながら、鈴木は呆れ半分いつもと変わらないと言う安堵半分で息を吐いた。 「……で? 俺のところになんで来たんだよ? オマエの未練と関係あるのか?」 舌を出していた田中はそれを聞いてぱっと微笑んだ。 「うん! そうそう!! 鈴木にお願いしたいんだ!」 そして、とても幽霊には見えない田中は、とても幽霊らしいお願いをした。 「あのね、私の身体を探して欲しいの」 「………………………………………………………………はぁ?」 こうして、鈴木と田中の「田中の身体探し」が始まった。
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