「田中の身体はきっとこの辺にあるに違いない!」 鈴木は確信もなくそう言った。 「でも、この辺でどうやって死ぬの?」 田中が首を傾げると、鈴木は少し考えてからこう答えた。 「オマエのことだから、その辺のくさはらの中で石に躓いて転んで頭打ったんじゃないのか?」 散々な言われようだが、田中は妙に納得していた。 自分ならあり得るかもと本気で思っていた。 「じゃぁ、この辺を探して見ようよ! 私はあっち探すから、鈴木はそっちね」 そう言って田中は、草原の中に姿を消した。 「……この広さを二人で探すって、結構キツイと思うんだけどなぁ……」 小さくぼやいてから、鈴木も草原に入っていった。 だが、日が暮れても田中の身体は見つからなかった。 「田中! ひょっとしてここじゃなかったんじゃないか?」 自分で言い出したのにも関わらず、鈴木はそんなことを言った。 けれども、田中の声は返ってこなかった。 「……田中?」 不思議に思い、鈴木はもう一度田中を呼んでみたが、やはり返事はなかった。 ほんの少しの不安を胸に、鈴木は田中が入っていった方の草原に足を踏み入れた。 「おい、田中? どこ行ったんだよ?」 いくら呼んでも返事は返ってこなかった。 もしかしてと思い始めたそのとき、鈴木は何かに躓いた。 「ぅわっ! ……っと、」 石に躓いたのかと思った。 後ろを振り返って足元を見ると、背の高い草に隠れて何かがあった。 暗くてよく見えなかったが、それが何かはすぐに想像できた。 「……嘘だろ?ホントにそうなのかよ……」 田中は自分の身体を見つけたいと言っていた。それが未練だった。 やけに幽霊らしくない彼女だったから、実感を持てなかったのだろう。 背の高い草に隠れていたのは彼女の身体。そして、彼女は未練を果たして消えた。 「ホントに、頭打ったのかよ……」 受け入れられなかった現実を、信じたくなかった真実を、ここまではっきりと突きつけられては、目をそらすことは出来ない。 田中は草原の中に横たわっていた。静かに。 おわり。 |