「よく考えてみたら、そんな相談するほどのことでもないんで帰ります!」
 それだけ言うと、黄麻はそそくさと逃げようとした。
「狐のくせに、騙すの下手だな」
 槐は笑顔を浮かべながら、指を鳴らした。
 その様子を見ながら、初音は心の中で謝った。
「え?」
 白煙が立ちこめたかと思うと、次の瞬間黄麻は鬼に囲まれていた。
「な、何でここに鬼が?」
 黄麻が顔面蒼白で呟くと、槐がしれっと言ってのけた。
「そいつら、俺の使い魔なんだ」
 妖怪を従えるには、基本的に力で押さえるしかない。しかし、人間にはそれほどの力はない。ゆえに、妖怪を従えようとすれば逆に喰われるのが普通である。それなのに、槐は喰われることもなく鬼を従えている。一体ならまだしも、数体。
 それはともかく。この人間は神主である。
「神主が鬼を従えて良いの?!」
 一般的に考えて、ダメだろ。
 だが、槐は答えなかった。
「嘘吐きには、天罰を」
「……え?」
 妖守神社に一人の少女の叫び声が響いたとか、響いてないとか。

おわり

最初からやり直す?