「僕、その人間探してきてあげるよ」
 そう言って駆け出した時、後ろからさくらが驚いたような困ったような声を上げた。それでも構わずクロはその場から走り去った。
 さくらのためだと思えば。
 黒猫が人間に嫉妬だなんて馬鹿らしい。そんなことは、しない。そんなことよりも、大切な友達のために。
 さくらのためだと思えば、つらくもなんともない。
「だって僕は、さくらの友達だから」
 小さく呟けば、その言葉は胸に深く突き刺さる。呟かなければよかっただろうか。
 そんなことを考えながらクロは、さくらの思い人を探したが、当てもなく探すのは無謀だろう。
 さぁ、どうしようか。
 全てはさくらのために。

匂いをたどる。
近所を手当たり次第に。