00.before

 

 近未来。
 現代よりも、まぁまぁ科学も発達した頃。
 人工知能プログラムがさほど珍しくなく、ヴァーチャルゲームでまるで本物のような体験を出来るようになった時代。
 これは、そんな時代のとある中学3年生の話。

「ね、ね。一緒の高校行こうよ?」
 ネットワーク上で交わされる会話。
 文字だけのような味気ないものではなく、まるで本人がそこにいるかのように声も立体映像も、ネットワークを通る。
 少女は、相手の返事も聞かずに自分勝手に話を進めていく。
「美鈴も栞もみんな受けるって言ってるんだよ? 受けるだけ受けてみようよ?」
 その言葉を聞いて、相手の少年はため息を隠そうともせずに吐いた。
「あのなぁ……お前が一番落ちる確率高いんだぞ? むしろ、学力だけで言ったらお前以外は全員余裕あるんだぞ?」
 少年の言葉に、少女は少しふくれながら言葉を返した。
「学力なんて、これから頑張れば良いの! ねぇ、あたし頑張るから一緒に行こうよ?」
 少女の何度目かのお願いに、少年は何度目かのため息を吐いた。
 自分が折れないと、このやり取りは延々に続くなと感じたらしく、少年は仕方ないなと呟いた。
「わかった。受けるけど、そのかわりお前ホントに学力あげろよ?」
「ホントに?! ありがとぉ!」
 少年の言葉に、少女は無邪気に喜んでいた。
「あたし、頑張るから! だから、絶対に朱星行こうね。煉」
 少女―悠莉・スガノの喜びように少年―煉・イケウチは呆れるのと同時に、悠莉らしいなと思った。

 私立朱星学園―有名難関校。この学園を卒業した者の多くがいわゆる「エリートコース」を進むので、人気が異様に高い。学力試験をクリアすると、2次試験が行われるらしいが、その試験の内容は全く公表されていない……

 

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