ぷろろーぐ

 舞台はどこか、地球とは違う世界。
 人間と魔物の住む世界。
 どちらも同じ言語を操る生き物。違いは異形かどうか。
 異形だと言うことだけで迫害され続けた魔物たちは、日に日に人間への負の感情を募らせていった。やがてその感情は限界を超え、爆発してしまった。
 一人の魔物が異形の者たちの上に立ち、こう言った。
「今までの恨みを全て晴らそう。全てを滅ぼそう。人間たちに復讐を」
 その魔物は次第に『魔王』と呼ばれるようになった。
 魔王に導かれ、魔物たちは着々と人間たちの世界を侵略していった。
 人間たちが恐怖に震え、祈り続けていた時、一筋の希望の光が差し込んだ。
 その光は魔王を討ち、人間たちの世界を救った。
 魔物たちが去ると、光は城下町に一本の剣を突き立てた。そして声高らかに言った。
「いつかこの剣を引き抜く者が現れる。その者こそ我の真の後継者なり」
 やがてその光は周囲から『勇者』と呼ばれるようになり、この物語は勇者の伝説として語り継がれた。

 それから時は流れ数百年後。
 人間たちの世界は再び魔物たちの侵略を受けた。
 多くの人間が怯える中、腕に自信のある人間たちは城下町へと向かった。そこには勇者が突き立てた剣がまだ残っていた。
 けれど、どれだけの人間が挑戦しても、剣はびくともしなかった。
 唯一の希望の光を誰もがあきらめていた。
 そんな中、それは起こった。
 一人の人間が魔王を滅ぼしたと。
 彼は勇者の剣を引き抜けはしなかったが、世界を救った。
 人間たちは『真の勇者』ではなくても、自分たちを救った彼を『二代目勇者』と呼んだ。

 そしてそれから更に数年後。
 人間たちは誰も知らなかった。
 魔王の血を受け継いだ子どもがまだ生きていること。
 世界はまだ勇者を必要としていること。
 知っているのはただひとつ。いまだそこにあり続ける勇者の剣のみ。

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