くえすと3.正しい強さの見極め方

 長くとがった耳のせいでいじめられていた頃。
 どれだけ人間に近い形でも、異形は異形。人間の輪の中には入れなかった。
「ねぇ、いっしょにあそぼう?」
 彼女は手を差し出してくれた。
 彼女は笑いかけてくれた。
 自分も、両親が忙しくて側にいてくれないのだと、お揃いだねと言った。
 何がそんなに嬉しいのか、理解出来なかった。
 ただただその手が信じられなかった。
 この子は馬鹿なのだろうか。このとがった耳が見えていないのだろうか。
 震える声で、自分が魔物であることを伝えた。
 彼女は変わらない笑顔で言葉を返した。当然のことのように。
 そうして、冬は春と出会った。

戻る
次へ