夢を見た。
 久しぶりに、杏樹が出てきた。
 どこまでも青い空を背に、真っ白い杏樹が笑っていた。いつ見てもやはり「天使みたいだ」と思う。いや、きっと彼女は天使になったのだろう。
 笑顔がまぶしい。
 六花の笑顔を見るたびに杏樹の笑顔を重ねていたが、改めて見ると全然違った。
 二人とも無邪気に笑うが、六花は少し控えめに、はにかむように笑っていた。杏樹の笑顔はまぶしいくらい明るく、満面の笑みをいつも浮かべていた。
 全然違うのに、どうして重ねて見れたのだろうか。
 直人の目の前にいる杏樹は六花とはまるで違う笑顔を浮かべていた。手を伸ばしたくなる。なのに届かない。
 遠くにいるとわかったとき、何故か杏樹が何かを伝えたがっていると気づいた。
 けれど、何を伝えたいのかわからない。
 杏樹の唇が動いているのに、わからない。
 音が聞こえない。
「杏樹、聞こえない」
 直人の声が届いているのかもわからない。
 わかるのは杏樹が何かを伝えようとしていることだけ。
 彼女が伝えたいことは、おそらく……

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