しばらくの間、調べ物をしていた。
 今すぐ、どうしても知りたいことがあった。
 それはとても単純なこと。
 答えはすぐに見つかる。
「……よし」
 心は決まっている。
 だって六花はいつも「直くん」と呼んでくれていた。
 その声に、笑顔に、いつも突き動かされていた。いつも、その笑顔が、その声が聞きたくて、それで動いていた。そのおかげで、六花と過ごした日々は輝いていた。
 もう一度会いたい。
 もう一度笑顔が見たい。
 もう一度声が聞きたい。
 そんな単純な願いじゃない。今度は、そんな自分勝手な願いじゃない。
 いつも「直くん」と呼びながら、きっと小さなシグナルを送っていた六花。誰も気づかないような小さなシグナルだったけれど、六花は助けを求めていた。実際がどうなのかはわからないけれど、直人はそうだと思っている。
 桜を見ているとき消えそうな笑顔をした。きっとその儚い桜と冬で終わる自分とを重ねたんだ。
 欲しい物として賢者の石を挙げていた。錬金術の霊薬だった賢者の石なら、ホムンクルスである自分も完全になれるかもしれないと思ったのかもしれない。
 杏樹に姿を重ねていると言ったとき。それでも物ではなく人として見られていたから、誰かの代わりでも人として必要としてくれたから、だから喜んでいたのだろうか。
 紫外線対策をしていなかった。それは冬で全てが終わるから対策なんてしても意味が無いという意味の「大丈夫」だったのだろう。
 振り返れば、数え切れないくらいのシグナルを送ってくれていた。
 それに答えたい。答えなくてはいけない。
 直人が考えて、そしてこれならと思ったこと。
 救えないかもしれない。けど、救えるかもしれない。
「……違う。絶対に、救ってみせる」
 それは決意だった。
 水槽の中の金魚は相変わらず静かだった。

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